第8回 AVモデルさんのギャラ(お給料)について③
さて、前回のブログで、僕はAVモデルさんのギャラを3つに分けて説明しました。
それは単体女優さん、企画単体女優さん、企画女優さんです。
でも実際にはこのAV業界も芸能界と同じでギャラなんてそれぞれなわけですね。
芸能人だったら、例えばダウンタウンや有吉弘行のような大御所から名もない若手の芸人さんまで、ギャラなんてもう、その芸人さんごとに異なるわけです。
では、ギャラって実際に、どうやって決まるの?って思う人もいるでしょうから、ここではそれを考えてみようと思います。
まず一つのアダルト作品ができるまでにどれだけのお金が必要なのかを考えてみましょう。わかりやすい一例をあげてみます。
【モデル出演料】
出演料(1名) 50万円----①
【撮影現場】
スタジオ代 10万円
小道具、衣装 10万円
監督 15万円
ビデオカメラマン 5万円
スチールカメラマン 5万円
メイク 4万円
AD① 3万円
AD② 3万円
AD③ 2万円
当日経費(お弁当など) 3万円
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計 60万円----②
【編集】
映像編集代 5万円
モザイク編集 5万円
------------------------------
10万円----③
【パッケージ】
デザイン 5万円
印刷 20万円
------------------------------
25万円----④
【DVD作成】
DVD原版作成 3万円
DVD審査費用 7万円
DVD商品作成(2000枚)15万円
------------------------------
25万円----⑤
①+②+③+④+⑤= 170万円
こうして考えると、1本のアダルトDVDを作成するのに約170万円かかるということがわかります。ただ、これはあくまでも一例で、もっと安く作ることも当然可能です。また海外に撮影に行ったりするとこれよりもっとかかりますね。
さて、これくらいのお金(170万円)をかけたとしたらどうなるかということをお話していきます。
AVメーカーは大抵ですが、こうして作ったDVDを1本1000円程度で問屋におろします。
そうすると仮に、DVD1本に170万円かかったとすると1700本売れてやっと元が取れるということですね。
そして2000本売れると30万円儲かったということになるわけです。
ただ、実際にはインターネットの配信の売上やレンタル店でのレンタルの売り上げなども収益となりますのでDVDがそこまで売れなくても大丈夫です。
しかし、インターネット配信にしても、レンタル店でのレンタルにしても1本あたりのメーカーに入ってくる利益は少ないのでそれほどあてにできないのが現状です。これについてはまた別のところで説明したいと思います。
さて、それではアダルトDVDはどれくらい売れるのでしょうか。現在は大雑把に1000本くらいです。
そうすると、先ほどの170万円かけて作品をつくった場合に、1000本しか売れなかった場合は大赤字になってしまいます。そう考えると、この例は比較的お金がかかっている撮影ということになり、2000枚程度の売り上げを見込んでいる撮影となるわけです。
それでは、今度は逆に、1000本の売り上げで利益が出るようにするにはどのくらいの予算で作品を作ればよいかを考えてみます。
1000本ということは100万円の売上ということです。そして15万円の利益を狙うとすると85万円で作品を作ればよいということです。
【モデル出演料】
出演料(1名) 20万円----①
【撮影現場】
スタジオ代 5万円
小道具、衣装 2万円
監督兼ビデオカメラマン 10万円
メイク 3万円
AD1兼スチールカメラマン 3万円
AD2 2万円
当日経費(お弁当など) 2万円
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計 27万円----②
【編集】
映像編集代 4万円
モザイク編集 4万円
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8万円----③
【パッケージ】
デザイン 2万円
印刷 15万円
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17万円----④
【DVD作成】
DVD原版作成 3万円
DVD審査費用(無審査) 0万円
DVD商品作成(1500枚) 10万円
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13万円----⑤
①+②+③+④+⑤= 85万円
以上のような配分ですと約85万円で1作品できるという計算です。
モデル代は20万円です。20万円はメーカーがプロダクションに支払う額ですからモデルさんのもらう額が半分とするとモデルさんのギャラは10万円です。
ただ、先ほど述べましたが、これ以外にもレンタルやインターネット配信の売り上げが見込めますので、もう少し売り上げは多いと見積もってもいいわけです。
さらに、この作品を将来に編集して別の作品として売ることもできますので、最悪これが赤字でも別の機会で利益がでるようにすればよいという風に考えることもできるわけです。
しかし、ここでの15万円の利益というのはあくまでも粗利であってメーカーは宣伝費や会社の家賃、従業員の給料など他にもいろいろと支払いがあるわけです。
だから、今述べたのは、作品を一本作った原価を回収できて15万円残った、という話であって会社として利益を出せたかどうかはまた別の話になってくるわけですね。
ところで、メーカーは本当はできるだけかわいいモデルさんを使いたいんです。昔に比べて最近は本当にAVが売れなくなってきていますから、少しでもかわいいモデルさんを使いたいんですね。同じ企画でもモデルさんの人気が高いと売れ行きが全然違います。
ただ、人気のあるモデルさんはやはり出演料は高いわけです。高くても利益が出れば問題はないんですけど、売れなかった場合は赤字になってしまうから、そのバランスを考えてモデルさんを選んでるわけですね。
そしてメーカーがやっぱり1000本くらいしか売れないから20万円くらいのモデル料が限界なんですよ、となるとプロダクションもその金額に応じざるを得ないということですね。
プロダクションとしては、できるだけ高い金額を引き出したいわけですけど、メーカーが20万円までが限界だと本気で考えているなかで、「いや~、この子は30万でないとうちは出せません」と頑張ってみても、「じゃ無理だよ」と言われてしまえば仕事が取れずに終わってしまうわけです。
最近の傾向としてはやはりモデル出演料は下がる傾向にあります。それはAV作品を作っても思うように売れないからメーカーが製作費を下げているからです。
しかし、それでもAVモデルの質は下がるどころか上がっているようにも感じます。たとえば、グラビアアイドルだったモデルさんや芸能人だったタレントさんなどがAVモデルに転身したりして、ちょっとしたニュースになったりしています。
そうしたことが、一般の女性も影響を与えていて、AVにでてみようかな、と考える女性の数が増えているのだと思います。
こうしてAVモデルを取り巻く環境が変わってきたこともあって、昔よりも、AVモデルになることへの抵抗が少なくなってきています。
しかし、そうした理由で、AVモデルさんが増えて競争が激しくなったことで、出演料は全体的に低下しているのが実情なんですね。
さて今回のような場合ですが、20万円でプロダクションが出演に応じた場合、モデルさんの支払われる金額は8~10万円前後となるでしょう。仮に10万円だったとして、この出演料が安いと感じるか高いと感じるかはそれぞれの立場でかなり異なります。
とりわけ、AVに出るという大決心をしたにもかかわらず、ギャラが10万円では、割に合わないと考える女性は少なくないことでしょうし、僕もそう思います。
ただ、仮に1000枚しか売れないとしたら、つまり、100万円しか売り上げが期待できないとしたら、この出演料を上げることは、簡単ではないということは今回の説明でわかってもらえたのではないかと思います。
こうして、モデル出演料は、メーカーとプロダクションのお互いが折り合う、ぎりぎりのポイントで金額が決まっていくわけです。
さて、次回もこのギャラの話を続けたいと思います。次回は高額な例をもとに、さらに話を深めていきたいと思います。