第21回 「企画のモデルさんには名前がないのはなぜ」
前回のブログに質問がありましたので、僕なりの考えを書いてみたいと思います。
ちびねこさんの質問は「どうして企画モデルさんには名前がないのですか」という質問です。
まず、大前提としてAVを作るのはAVメーカーということがあります。AVモデルプロダクションではないわけですね。
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テレビに例えてみましょう。番組を作るのはテレビ局の社員さんの割と偉い人、つまり番組プロデューサーです。どんな番組を作ったら、たくさんの人に見てもらえるかを考える人です。たくさんの人が見てくれると、その番組の間に流れるコマーシャルもたくさんの人に見てもらえます。
プロデューサーはそもそもどんな番組を作るかを考えます。ドラマがいいか、バラエティーがいいか、歌番組がいいか、ドキュメンタリー番組がいいか、などなどです。そして今回はドキュメント番組を作ることにしたとしましょう。
タイトルは「THE 警察24時」にしました。警察を取材したドキュメント番組ですから、これは私たちの日常の中で起きた犯罪がテーマです。暴走族の取り締まりとか、覚せい剤の密売人を逮捕する瞬間とか、そんな映像がわかりやすいし、たぶん受けそうです。だからそういう映像がとても欲しい映像ですね。個人の名前とか顔というのはあったら、なお良しですけど、まあ犯罪者になるのでモザイクかけてもいいでしょう。雰囲気が伝われば特に必要はないですね。
暴走している絵なんか最高ですね。バイクに二人乗りした若いアンちゃんがいて、後ろに乗っているアンちゃんがバットとか振り回して、信号無視とか蛇行運転とかバンバンやってくれると、とてもいい絵が撮れます。
さあ、ほかにも窃盗事件とか、傷害事件とか過激な映像をいっぱい集めて２時間くらいにまとめて出来上がりです。いい絵がとれなかった時はやらせ映像をつかってもいいでしょう。アルバイトの大学生に協力してもらって覚せい剤の密売現場の映像をちゃっちゃと作ってしまいました。実際に犯罪は毎日どっかで起きているので、その映像はやらせでも、内容は事実ですから、それを事実として編集してもそんなに問題はないでしょう。時間と予算が限られているので仕方ありません。
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さて、話をAVにもどしますと、AVメーカーは作った作品がどれだけ利益を出せるかだけを考えています。AVメーカーは映像制作者ですから、「どれだけその作品が売れるか」だけを考えています。
企画作品を作る以上、その企画と実際の映像がユーザーにどれだけ支持されたかという点が売り上げを左右します。
だから企画は絶対的に優先されます。例えば、ナンパもののAVを作るなら、それはナンパらしく見えないと絶対に売れません。
AVというのは男の性的興奮を満たすようにつくらなければなりません。簡単に言うと面白くないとだめです。面白いというのはエロいと言うことです。
しかしエロいというのは結構複雑なんですね。男の性的興奮というのは、一筋縄ではいかないのです。
企画というのは、そうしたエロさを追求するために必要な条件を満たそうとしてAVメーカーが考えた方法論とも言えます。
例えば、ナンパがいいというユーザーがある一定数いるわけです。街を歩いている普通のＯＬさんに声をかけて、素人のかわいい女の子を、最初は嫌がっていたんですけど、上手に少しづつ口説いて、最後にはセックスまでいけちゃいました！というのは、多くの男性のツボなわけです。
このOLさんが（実はモデルさんですが）AVモデルとしてカメラの前で普通にセックスしても、面白くもなんともないんですけど、OLの格好して、素人として出てきて、会社の帰りにナンパされてセックスしちゃった！となると「ぬ～っ、たまらん」となる男性が多いということなんですね。
で、そうした設定を大事に考えた時に、モデル名は、むしろ無い方が良いことがあります。あるいは、モデル名は全面に出さないほうが、作品に沿う、つまりそれっぽくなるということが往々にしてあるわけですね。
このナンパの例の場合もそうですけど、こうしたナンパものAVも、ほとんどがやらせ、仕込みなんですけど、それにしても、このナンパビデオのパッケージにモデル名が「山田花子さん」とか大きく書かれているよりは、「はなこちゃん」と小さく書かれている方がそれっぽい感じがして売れる確率が高くなるわけでです。デザイン的にも、その方がパッケージを作りやすくなります。
二つ目の大きな理由として、AVメーカーの販売戦略があります。これまで何度も書きましたけど、今はDMMというサイトが売り上げに大きな影響力を持っています。ここで調べると特定のAVモデルさんがどのAVに出ているかが大抵はわかるようになっているんです。（例外もありますが、それはまた次回以降で書いてみたいと思います。）だから、どうせ後でバレるし、みんな知っているからと言ってここでモデル名を明らかにしてしまうと、DMMの検索に引っかかってしまって素人OLとして出演してた山田花子さんがほかの作品にヒットしてしまってドドーっと山田花子さんの作品がでてくると、やらせというのがバレバレになってしまいます。
そうすると、なんだやらせか、となってせっかく買ってみようかなと思ったユーザーの気持ちを萎えさせてしまう結果になるということですね。
どこかでバレるのは仕方ないんですけど、メーカー自らが売り上げを落とすというのは絶対に避けないといけません。
そもそもですけど、AVモデルというのは基本的には「素人（しろうと）」さんというのが根底にあるんです。単体モデルでもデビュー時が一番価値があります。それはデビュー時は素人の感じが強いからです。
AVモデルさんの寿命が短いとというのは、飽きられるというのも、もちろんあるんですけど、実際には、この素人の感じが徐々になくなってくることが最大の原因ではないかと思います。
男の心理としては、女性の戸惑っている表情とか緊張している表情とかに興奮するんですね。裸になっても、どこか落ち着いて堂々としている姿にはあまり興奮しないんです。
さて、ちびねこさんの質問は「企画のモデルさんには名前がないのはなぜ」でしたが、まとめますと、AVというのはそもそも、素人の感じがとても大事で、この素人の感じというのは無名というのと親和性があるわけですね。企画モデルさんに名前をつけないのは、一言でいえば、名前がない方がむしろ自然で売れるからということだと思います。
